開発日誌 (~2012年)


# ワセリンと乾燥肌
(2009-01-24 07:50:49)

ワセリンと乾燥肌


お肌の老化は皮膚の乾燥からはじまります。

皮膚が乾燥する原因は保湿成分が加齢とともに失われるからです。

皮膚の乾燥は皮膚が薄い目元や口元から出やすくなります。


皮膚の乾燥を防ぐ方法


(1) コラーゲン・ヒアルロン酸・セラミドなどカラダ自身が本来持っている保湿成分やグリセリンなど本来カラダの成分でない保湿成分を外部から補給する

(2) ワセリンやオイルなど、乾燥を防ぐ成分を皮膚に塗布する


保湿成分


コラーゲン・ヒアルロン酸・セラミドなどは化粧品の人気の成分ですが、お肌からの水分蒸発を防止するものではありません。

まずはお肌から水分が逃げない対策をした上でこれらの保湿成分を補充すればより効果的です。


ワセリンなどで乾燥を防ぐ


ホホバオイルやオリーブオイルなどオイル類をお肌に塗布することは乾燥防止のため効果的です。

ただし、水などで落ちやすい点がやや弱点になっています。

その点、ワセリンはオイルよりも固いテクスチャで皮膚にとどまる力が強い点がメリットです。



開発日誌 (~2012年)


# ワセリンは万能薬か?
(2009-01-24 07:50:48)

万能薬と考えられたワセリン


ワセリンは発売当初から、それまでのハンドクリームや軟膏には見られないほど、切り傷・手荒れ・手湿疹に対して治癒効果を発揮しました。

ワセリンの発明者であったチーズボロー氏の熱心な啓蒙活動やマーケティングの影響もあって、やがてワセリンは一部の人々から「万能薬」と考えられるようになりました。


ワセリンを食べる?


ワセリンの発明者・チーズボロー氏は万能薬としてのワセリンに対して深い信念を抱き、毎日スプーン一杯のワセリンを食べていたと言われています。

胸膜炎を患ったときは頭・背中・足までワセリンを塗布することで短期間に回復しました。

チーズボロー氏は96才の長命を全うしますが、ワセリンのおかげと信じていました。

ニキビ・ヤケド・切り傷・擦り傷の範囲なら効果が確認できます。

しかし、チーズボロー氏のように食べたり、胸膜炎の治療に使用することに対して、科学的・医学的に意味があるかどうかは現代医学では意見が分かれると思われます。


薬効がないワセリン


現在、ワセリンは何の薬効もないものと考えられています。

薬効がないため触れるものに何の変化を起こさせず、自分自身も変化せず安定した状態であることが結果的に皮膚を保護します。

つまりワセリンのメリットはただ一つ、人体に影響を及ぼさず、比較的長時間、皮膚にとどまり、外界からの水・刺激・乾燥から皮膚をがっちりプロテクトすることです。

そのため人体は本来を治癒力を発揮しやすくなり皮膚の再生を促進します。

つまりワセリンのメリットは人の自然治癒力を引き出す点です。

これこそ、古代ギリシャ医学や東洋医学から受け継がれる医学の原点ともいえる作用と思います。



開発日誌 (~2012年)


# ワセリンと原油
(2009-01-24 07:50:47)

原油から生まれるワセリン


地中から掘り出された原油はそのままで利用されることはほぼありません。

原油とは採掘後、ガス・水分・土砂などを大まかに除去した状態の石油で原油は蒸留や分留と呼ばれる石油精製のプロセスを経て様々な製品が精製されます。

石油には不純物として硫黄・酸素・窒素などが含まれるます。

石油と言えば、ガソリンや灯油などの燃料のイメージですよね。

プラスティックの原料というイメージもありますが、その生まれる過程を見る機会が、一般消費者の私たちにはあまりないので知識として知っている方がほとんどです。


奇跡の成分 = 石油


実は石油は純粋な炭化水素の塊、炭化水素を混合物です。

この炭化水素は燃料にもなりますし、プラスティックの原料にもなりますが、様々な薬品が生まれ、もし食料危機が起これば、食品の原料にもなり得るミラクルな成分です。


ワセリン = 炭化水素


原油を構成している物質は主に炭化水素。

炭化水素とはC(炭素原子)を核に複数のH(水素原子)が組合わさった分子。

C(炭素原子)の数によって多数の種類があります。

代表的な炭化水素にはメタンやプロパンがあります。

下記表は炭素数別の炭化水素(アルカン、飽和炭化水素、パラフィン系炭化水素)の種類と製品への応用例です。この表からワセリンが石油製品の仲間であることがよくわかりますよね。


Table【アルカン、飽和炭化水素、パラフィン系炭化水素の例】
分子式(nH2n+2)分子量名称用途
CH416メタン燃料ガス
C2H630エタン燃料ガス
C3H844プロパン燃料ガス
C4H1058ブタン燃料ガス
C5H1272ペンタン溶剤
C6H1486ヘキサンガソリン
C7H16100ヘプタンガソリン
C8H18114オクタンガソリン
C9H20128ノナンガソリン
C10H22142デカンガソリン
C11H24156ウンデカン灯油
C12H26170ドデカン灯油
C13H28184トリデカン灯油
C14H30198テトラデカン灯油
C15H32212ペンタデカン軽油
C16H34226ヘキサデカン軽油
C17H36240ヘプタデカン軽油
C18H38254オクタデカン重油
C19H40268ノナデカン重油
C20H42282エイコサンワセリン
C25H52352ペンタコサンワセリン
C30H62422トリコンタンワセリン
C40H82562テトラコンタンワセリン


※ワセリンは一般に炭素数が20-40程度のものです(厳密な定義はありませんので必ずこの範囲の炭化水素を指すわけではありません)。

※これ以上の炭素数になるとタール、アスファルト、残余燃料などになります。






開発日誌 (~2012年)


# ワセリンとメンソレータム
(2009-01-24 07:50:46)

ワセリンから生まれたメンソレータム


メンソレータム(Mentholatum)はメンソール(Menthol)とペトロリータム(Petrolatum = ワセリン)からの造語です。


メンソレータムの歴史


1894年生まれのメンソレータムはワセリンにメントールとカンファーを配合した医薬品です。

あらゆる種類の皮膚トラブルに効果的なことから発売当初から米国で爆発的な人気を博しました。

メンソレータムはメンソレータム社(The Mentholatum Company Inc)によって、開発された軟膏薬です。

設立者はアルバート・アレキサンダー・ハイド(Albert Alexander Hyde)氏。

開発のきっかけは風邪によるノドの痛みを緩和する「せき止めシロップ」や胸に塗る「せき止めクリーム」の開発でした。


ワセリン + メントール


主要成分はカンファーとメントール。どちらも涼しい印象を与える成分ですが、皮膚の炎症に対して抗炎症作用があります。

「せき止めクリーム」は実際に商品化されましたが、消費者はそれが全身のスキンケアに有効と感じ、切り傷や手荒れなどに使用する人が多いことが判明しました。

つまり「せき止めクリーム」はせき止めよりも、手足の傷用常備薬として利用されました。

そのため開発をやり直し1894年「メンソレータム軟膏」がリリースされました。

これはワセリンにメントールと多少の精油などを配合した製品です。


メンソレータム社の変遷


リリース後すぐに大変なヒット商品となり、1920年(大正9年)には近江兄弟社によるメンソレータム輸入販売開始されました。

その後、近江兄弟社は日本における「メンソレータム」製造・販売権を取得し、国内製造販売を行います。

メンソレータム社は1988年日本のロート製薬社によって買収され、現在、ロート製薬傘下でメンソレータムは販売されています。


開発日誌 (~2012年)


# ワセリンの商標
(2009-01-24 07:50:45)

ワセリンの商標


ワセリンは普通名詞のように使用されていますが、実は商標。


チーズブロー社の変遷


ワセリンを世界で始めて発明し製品化したチーズブロー社は1955年、ポンズクリームで有名なポンズ社(Pond's Company)と合併し「チーズブローポンズ」(Chesebrough-Ponds)となりました。

チーズブローポンズ社はハンドクリームやボディクリームなどパーソナルケア製品において有力企業として成長します。

その後1987年、オランダ系多国籍企業ユニリーバ社によって、チーズブローポンズ社は買収され現在に至ります。

この買収で社名から「チーズブロー」が始めて失われました。チーズブロー社設立115年後のことです。


ユニリーバ社


現在、ワセリン商標の所有者はユニリーバ社です。

そのため英語圏ではワセリン(Vaseline)は一般名詞として使用されず、「Vaseline」という言葉は商品名・商標名・ブランド名としてユニリーバ社のみが使用する権利を有します。

普通名詞としてワセリンを指す場合、「ペトロリアム・ジェリー」(ペトローリアム、petroleum jelly)または「ペトラタム」(ペトロリータム、petrolatum)と呼ばれます。


海外の事情


しかし、1870年代から、延々とワセリン(Vaseline)という言葉が世界中で使用されてきたためスペイン語圏・ドイツ語圏・北欧圏ではワセリンは普通名詞として使用されています。


日本の事情


日本でも日本薬局方には一般名称として「ワセリン」が記載されており、同様に普通名詞として使用されています。

電子楽器の「エレクトーン」やファスナーの「チャック」、宅配便の「宅急便」などと似た現象ですね。

ユニリーバ社はワセリン商標が無断で使用されている問題に対して、自社商標をプロテクトする様々な手段がありますが、今のところ具体的な方針や対策はしていようです。

今後の商標問題の行方は不明です。

ちなみに、ユニリーバ社は日本でもワセリンを販売していますが、商品名は『Vaseline』で日本語名として『ヴァセリン』と表記されています。

これはおそらく「ワセリン」が日本では普通名詞化しているためあえて「ワセリン」を避け、商品名区別のために「ヴァセリン」と命名されたのではないかと推測されます。



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