19 月桃(ゲットウ)の香り

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月桃とは?

ゲットウはショウガ科ハナミョウガ属の常緑多年草。姿はイネ科のアシやサトウキビを巨大化した感じの植物。私は巨大なハーブと見なしています。

沖縄、東南アジア、台湾、中国南部などアジア南東部に広く自生しているハーブ。沖縄では「サンニン」と呼ばれ、いたるところに自生し、食品の保存や香り付けなどの人々の生活に溶け込んでいます。邪気払いのハーブ。「ゲットウ」は漢名の「月桃」の読み。

北大東島 月桃畑
※たわわに実る北大東島 月桃畑(国分撮影 2012年) この島のメインの作物はサトウキビですが、その畑の周囲を囲むように月桃が植えられていました。防砂対策・防風林対策として、そして精油採取に利用されます。

月桃の精油

日本では精油生産は経済構造上、産業として成立することがかなり厳しい状況にあり、日本で生産される精油はほとんどありません。しかし、沖縄で生産される月桃精油は産業ベースで生産されている稀少な事例となっています。

月桃精油の特徴は次の2点:

・強い殺菌効果・抗菌効果・消臭効果・防虫効果
・薬草のような個性の強い芳香

月桃の芳香

月桃の花にはあまり香りがありませんが、葉や茎からは薬草のような独特な芳香が感じられます。これらの芳香は精油(エッセンシャルオイル)から発せられています。

沖縄では月桃の葉にムーチー(饅頭)を包んで蒸す習慣があります。精油自体に殺菌・抗菌・消臭効果があり、また同時に独特の芳香が食欲をそそります。

沖縄で月桃の葉に包まれたムーチーの買うとき、店主に尋ねたところ、沖縄の人はこの香りが大好きですが、本土の人ははじめてで苦手に感じる人も多いとのことでした。おそらく、それだけ強く個性がある香りということでしょうが、慣れれば病みつきになりそうな香り。

月桃の名前

沖縄では「サンニン」と呼ばれます。「月桃」は台湾での呼び名ですが、日本でも月桃という呼び名は定着しています。「月桃」という名前の由来は詳しくわかっていませんが、花の形と花の先端がほんのりピンク色になる点と桃を思わせるためではないかと空想しています。

月桃の原産地と生息地

原産地は東南アジアで、東南アジア、台湾、中国南部などアジア南東部から、インド南部など亜熱帯の南アジアに広く分布しています。日本では沖縄本土と周辺の島々、屋久島や種子島に多く生育しています。これらの地域では自生していると同時に精油やお茶の生産のため栽培されている場合があります。

赤土流失対策としての月桃(石垣島)

石垣島では近年の土地開発で保全林が少なくなり、畑の赤土が雨水とともに海岸に流れ出すことが問題になっています。流れ出した赤土は島周辺のサンゴの死滅・白化現象の原因の一つとなっています。

石垣島ではサンゴ礁を守るために、月桃を畑の周囲に植えることで赤土の流出をくい止める活動が盛ん。月桃の植樹活動はボランティア活動としても行われ全国からボランティアが参加しています。

月桃はしっかりと根を張るだけでなく、地下茎で周囲に拡散し密集して群生する性質があります。また、いったん植えると手間暇かけずに大きくなるためグリーンベルトとしては最適な植物と思われます。

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大まかな特徴

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