開発日誌 (~2012年)
ワセリンに日焼け止め効果はある?なし?
(2009-01-24 07:51:05)
おかしな情報も普通に出回るネット
ワセリンで日焼け防止(UVカット)ができる・できないという意見が散見されます。
いろいろな人がいろいろなことを書き、また、それを検証なしでコピー&ペーストして拡散する人もいますのでネット内では怪しい情報も。
さて、今日のテーマは「ワセリンの日焼け止め効果」の有無。実は私もわからない部分が多く、工場長に指南してもらいこれを書いています。
メーカーの見解
当社のワセリン製品・ベタガードにはサンホワイトというワセリンが使用されています。
こちらのメーカーさんではサンホワイトの「日焼け止め効果」を「ナシ」と明言されています。
---------------(引用)----------------
日焼け止めにもなりますか?
サンホワイトP-1は日焼け止めの効果はありません。日焼け止めの目的ではご使用にならないでください。日焼け止めと併用される場合は特にどちらを先につけたほうが良いということはありません。ご使用中の日焼け止めのタイプにより、使用感のよい方法でご使用ください。
(http://www.sunwhite.net/qa/)
------------(引用ここまで)------------
製造元メーカーさんが明言されているわけでそれを使用して製品化されたベタガードも公式には「日焼け止め効果はない」とするしかありません。
ただ、実際はどうなんでしょうか?
二種類の日焼け
一般に「日焼け」といえば、海やプールに行き、赤くヒリヒリになった肌(炎症状態)を指すと思います。
しかし、日焼けにはもう一種類の「日焼け」があります。赤くヒリヒリにはなりませんが、お肌が黒くなる日焼けです。
この二種類の日焼け、広告や説明文ではどちらの日焼けを指すのか、それとも両方を指すのか、このへんがかなり曖昧まはた混同されているものが多くて、それが混乱の原因になっています。
光と紫外線
光は波状のエネルギー(電磁波)と言われます。
電磁波は周期が短い波長から長い波長までグラデーションのように連続していますが、そのうちヒトの目が認識できる光は「可視光線」です。
その前後に波長が短い「紫外線」と波長が長い「赤外線」があります。
可視光線から上の長い波長に関してはヒトへの影響は高くありませんが、紫外線以下の波長(紫外線を含めX線やγ線など)は細胞をDNAレベルで変質させるリスクがあります。
紫外線の種類 - A & B
紫外線は案外幅広く、UVケアの観点からすると波長の長い順に「A・B・C帯」に分類されます。
波長は短い方がよりパワーがありますが、C帯はオゾン層に吸収され、地上に降り注ぐ紫外線は実質A帯・B帯となります。
そして波長が短いB帯(UV-B)が、短時間に肌を赤くヒリヒリ(肌炎症)させる紫外線です。
A帯(UV-A)は直接的かつ短時間で肌炎症を起こさせるパワーはありません。
しかし、皮膚の奥まで届くことからA帯(UV-A)はシミや老化の原因になりうると考えられています。
どちらも恐ろしい電磁波ですね。
市販の日焼け止め成分
現在主流の成分は紫外線を乱反射させる金属粉によるものと、紫外線を吸収するケミカル成分によるものがあります。
紫外線を乱反射させる金属粉の内、酸化チタンはB帯(UV-B)、酸化亜鉛はA帯(UV-A)にて日焼け止め効果を発揮します。
A帯(UV-A)・B帯(UV-B)の日焼け止め効果の強さはそれぞれ「PA」・「SPF」という指標で表現されます。
・A帯(UV-A)・・・「PA」
・B帯(UV-B)・・・「SPF」
工場長の言を引用すれば、「日焼けの定義はSPF⇒赤くならない、PA⇒黒くならない、簡単にいうとこうなります」
「紫外線は雲も服も通り抜ける」は本当か?
よく言われることですが、「曇っていても紫外線は通り抜ける」とか、「服を着ていても紫外線は通り抜ける」ので日焼けする、と。
しかし、曇りの日は晴れの日よりも、明らかに肌が赤くヒリヒリになる日焼けは少ないと思いませんか?
また、服を着ていたら、肌が露出している部分と服に隠れている部分では明らかに焼け方が違うと思いませんか?
そうなんです、明らかに違うのです。雲や服で紫外線が、かなりブロックされていることがわかります。
では「紫外線は雲も服も通り抜ける」はウソなんでしょうか?
そうともいえません。
紫外線の種類から見れば、B帯(UV-B)はそれなりに雲や服にブロックされますが、波長が長いA帯(UV-A)では通り抜ける確率が高くなります。
だから、結果的に雲や服があっても黒くなる日焼け(結果的にシミや老化の遠因になるリスク)を起こす可能性があります。
ワセリンの日焼け止め効果は?
上のセクションで書いたように製造メーカーさんではワセリンに日焼け止め効果はないと明言されていました。
しかし、実際はB帯(UV-B)では多少の「SPF」が期待できるという点が実際のところのようです。
これはワセリンだけでなく、植物オイルにも言えることで多くの植物オイルで多少の「SPF」が期待できるようです。
民間療法ではひまし油やホホバオイルが日焼け止めとして利用されてきた話は世界各地で聞かれることですので実体験的にも符合します。
ただ、もう一つの日焼けであるA帯(UV-A)の「PA」効果についてはよくわかりません。
これまで問題にされることが少なかったこと、またシミや老化といった発現まで時間を要し、かつ原因を特定しにくいため実体験的な知見も少なければ、科学的なデータも少ないという状況のようです。
B帯(UV-B)より通り抜けやすい波長ですからリスクはあります。
であれば、B帯(UV-B)での「SPF」効果だけでなくA帯(UV-A)の「PA」効果まで含めて、「日焼け防止効果あり」と明言する方が困難です。
それゆえ、立場上あるいはリスク管理上、ワセリンメーカーさんが「日焼け止め効果はない」というスタンスに立つことは仕方ないことと思います。
まとめ
ワセリンには日焼け止め効果がある程度期待できるが、それは紫外線の中でも、B帯(UV-B)の紫外線( = 短時間で肌を赤くし肌炎症を起こさせる紫外線)のみ。
A帯(UV-A)の紫外線( = 肌を黒く変色させる紫外線)に関しては不明。
開発日誌 (~2012年)
サンホワイトのまとめ
(2009-01-24 07:51:04)
精製度が高いワセリン、サンホワイト
ワセリンは炭化水素の固まりでその純度はいろいろ。
純度を上げることがワセリンの品質として評価されます。
以前は「黄色ワセリン」というワセリンも市販されていました。
純度は「白色ワセリン」にやや劣りましたが、充分に利用可能でした。しかし、現在、化粧品・医薬品にはほぼ白色ワセリンが採用されます。
一般に白色ワセリンは充分に純度が高く、ほとんどが安定した性質の飽和型・鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)から構成されています。
しかし、これを上回る純度のワセリンも商品化されています。
その一つがサンホワイトです。
市販ワセリンとしては最高の純度と推測されます。ベタガードのワセリンはサンホワイトが採用されています。
サンホワイトとは
サンホワイトとは化粧品・医薬品原料メーカーの日興リカ株式会社が販売しているワセリンの商品名です。
サンホワイトはワセリンの中で「もっとも精製度が高いワセリン」として認識されており、極度に純度の高いワセリンを必要とする医薬品や医療現場、化粧品などに採用されています。
医療関係者の間で信頼感が高いサンホワイト
わずかな不純物にもアレルギー反応などを示す患者さん向けのワセリンとして、サンホワイトは医療関係者の間で有名です。
また、アレルギー反応をチェックするパッチテスト(かぶれ検査)の基剤として、日本接触皮膚炎学会によって認められている唯一にワセリンです。
ワセリンでアレルギー反応が起こるとパッチテストになりませんのでかぶれない物質としてサンホワイトが認められています。
ワセリンの純度比較
業界では市販されているワセリンのワセリン純度の高さは下記の順になっていますと言われています:
・日本薬局方・白色ワセリン → サンホワイト(商品名)
※日本薬局方・白色ワセリンとは日本薬局方に規定された基準に準拠して制作されたワセリンを指します。
国内では数十社が日本薬局方・白色ワセリンを製造していると言われます。
開発日誌 (~2012年)
サンホワイトのメリット
(2009-01-24 07:51:03)
成分
白色ワセリン100%。サンホワイト自身は香料・着色料・保存料などの添加物が配合されておらず、ほぼ完全に純粋な炭化水素の塊です。いろいろなメリットがあります。
用途
用途の幅の広さもウリです。
- ・乾燥皮膚(手・唇・目を含む顔・カラダ全身)のスキンケア
- ・赤ちゃんのスキンケアに
- ・接触性皮膚炎のスキンケア
- ・アレルギー・パッチテスト基剤
- ・ハンドクリームや軟膏の薬剤基剤
- ・化粧品の基剤
こんなにメリットがある純粋ワセリン
- ・白色ワセリン100%
- ・香料・着色料・保存料など無配合
- ・半透明、ほとんど無味・無臭
- ・酸化安定性 → 紫外線吸収がほとんどないため光酸化による影響が少ない
- ・露光安定性 → 太陽光に対して変質などが起きにくく安定した性質を示す(不飽和の多環状物質、極性物質が除去されているため)
- ・皮膚刺激性がきわめて低い
- ・ほとんどの薬剤に対して化学的に不活性で安定している
- ・皮膚細胞に対して化学的に不活性で安定している
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水素化精製
(2009-01-24 07:51:02)
日興リカ
日興リカ株式会社は化学メーカーさんですが、水素化触媒メーカーで水素化触媒・水素化反応に独自の技術がある会社さんです。
「水素化」とは水素原子を物質に分子レベルで結合させる技術です。
「水素添加反応」や「水添(すいてん)」と呼ばれています。
水素化精製で極限まで純度を高める
この技術は原料成分を他の成分に作りかえること(化学合成)や、物質の精製(水素化精製)・脱色・脱臭などに利用されます。
たとえば水素化による化学合成の例として窒素からアンモニアへの合成、一酸化炭素からメタノールの合成は有名な応用事例です。
水素化による精製(水素化精製)の例として原油の精製が上げられます。
大気汚染の克服に貢献
原油にはイオウ・窒素・酸素・金属などの不純物が含まれています。
精製技術が低かった1970年頃代まで世界的に石油による大気汚染は大変な深刻さがありました。
しかし、水素化精製などの技術により、現在のガソリンや石油は不純物が少なくなり、日本は深刻な大気汚染を克服することができました。
水素化精製で生まれたサンホワイト
この水素化精製を利用してサンホワイトは世界最高クラスの高純度ワセリンとして製造されています。
ワセリンに含まれる不純物とはつまり原油の不純物と同じイオウ化合物や窒素化合物、芳香族化合物なので水素化精製はワセリンの精製にも力が発揮されます。
開発日誌 (~2012年)
ワセリンとアルカン
(2009-01-24 07:51:01)
石油精製
ワセリンは石油を精製して製造されます。
石油は様々な不純物が混じった炭化水素の集合体です。
石油精製とは不純物を取り除き、純粋な炭化水素を分子量の大きさ順に個別(ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油・・・など)に取り出すプロセスを指します。
アルカンとは?
炭化水素とは炭素原子と水素原子でできた化合物の総称です。
炭化水素は構造上の特徴から次のグループに分類されます:
・アルカン
・アルケン
・アルキン
・シクロアルカン
・芳香族炭化水素
このうちアルカンとは鎖式飽和炭化水素(saturated hydrocarbon)と呼ばれます。
別名、メタン系炭化水素・パラフィン系炭化水素。
「鎖状」の意味は炭化水素の単位分子が鎖状に横長く連なる形状を指します。
「飽和」の意味は炭素-炭素間の結合が単結合(一重結合)で構成されており、二重結合や三重結合が含まれていない状態を指します。
飽和していると分子的に安定な状態にあり化学変化が起きにくい特徴があります。
アルカンの化学式は(CnH2n+2)と表現されます。
たとえばn=1(炭素数=1)ならメタン、n=2ならエタンと言った具合です。
nが上がるに従って分子量は大きくなります。
炭層数に応じて成分名がつかられている。自然界では炭素数100程度が限度と考えられている。
ワセリンとは炭素数16以上のアルカン
炭素数が少ないうちは常温では気体で炭素数が大きくなるに従って融点が下がり液体や固体へ変化します。
ワセリンは炭素数が16~20くらいの炭化水素の混合物で融点は40-60度前後。
ただし、炭素数に関して厳密な定義はなく一般的にこの範囲をワセリンと呼びます。
・炭素1個・・・メタン(CH4)・・・燃料ガス
・炭素2個・・・エタン(C2H6)・・・燃料ガス
・炭素3個・・・プロパン(C3H8)・・・液化石油ガス
・炭素4個・・・ブタン(C4H10)・・・液化石油ガス
・炭素5個・・・ペンタン(C5H12)・・・溶剤
・炭素6個・・・ヘキサン(C6H14)・・・ガソリン
・炭素7個・・・ヘプタン(C7H16)・・・ガソリン
・炭素8個・・・オクタン(C8H18)・・・ガソリン
・炭素9個・・・ノナン(C9H20)・・・ガソリン
・炭素10個・・・デカン(C10H22)・・・ガソリン
・炭素11-14前後・・・灯油
・炭素14-17前後・・・軽油
・炭素18-19前後・・・重油
・炭素20前後・・・潤滑油
・炭素20以上・・・残油(パラフィン・ワセリン・タール・アスファルト)